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森の恵みを知る~目に見える自然の力と日本の智恵~

【樅の木の内装材のはなし】
これまで針葉樹にあるフィトンチッドの成分について度々お話ししてきました。昔から私たち日本人は様々な木を生活に取り入れてきました。また主要な針葉樹から共通して分かったことは抗菌・防虫効果が高いということでした。
森の恵みが豊富な木々たち
主要な針葉樹:
- サワラ
- ヒノキ
- マツ類
- もみの木
- ヒバ
日本の伝統的な利用法
特に印象的なのが、食品保存のための利用法です
伝統的な用途:
- 酒樽や味噌樽
- 米びつや穀物の保存容器
- 弁当箱
- おひつ(ご飯を保存する容器)
- 漬物桶
私たちの祖先は、科学的な分析技術がなかった時代から、経験的にこれらの木の持つ「ばい菌をよせつけない力」を知っていたんですね。
現代の住まいづくりへの応用
この伝統的な知恵は、現代の住まいづくりにも活かせます。
私たちが家づくりでヒノキやもみの木を使うのも、美しさだけでなく、こうした機能性を重視しているからなんです。
フィトンチッドは目で見える?

「ブルーマウンテン」現象
これは私も最初に知った時は驚いたのですが、フィトンチッドって実は目で見ることができるんです。
「ブルーマウンテン」という名前、聞いたことがありますか?コーヒーの銘柄としても有名ですが、実はこれ、自然現象の名前でもあるんです。
ブルーマウンテン現象とは:
- お天気のいい日に遠くの山を見ると、少し青みがかって見える
- 特に朝や夕方に顕著に現れる
- 美しい自然の光景として親しまれている
青く見える理由
この美しい青い色の正体が、実はフィトンチッドなんです。
メカニズム:
- 木々がフィトンチッドを空気中に放出
- 太陽の光がフィトンチッドの微粒子に当たる
- 青い光が散乱・反射される
- 私たちの目に青く見える
つまり、あの美しい青い山の景色は、「目に見える森の息吹」だったんですね。
身近なところでも観察できる
実は、遠くの山だけでなく、もっと身近なところでもこの現象は観察できます。
近くの森や林で:
- 木の葉っぱをよく見ると、緑だけでなく少し青みがかって見えることがある
- 特に針葉樹の森では顕著
- 朝の光の中で特に美しく見える
今度森を歩かれる時は、ぜひ注意深く観察してみてください。きっと新しい発見があるはずです。
科学と感性の融合
美しさの裏にある機能
自然の美しさって、ただ偶然そうなったわけではないんですね。その美しさの裏には、必ず生物学的な意味や機能があります。
フィトンチッドの青い光も:
- 木々の健康維持のサイン
- 周囲の環境浄化の証拠
- 私たち人間にとっての癒し効果
という、複数の意味を持っているんです。
住まいでの活用
この知識を住まいづくりに活かすと:
窓からの景色を大切に
- 針葉樹の見える位置に窓を配置
- 朝日が当たる方角を意識
- 自然の美しさを室内から楽しめる設計
室内での針葉樹の活用
- フィトンチッドが豊富な木材を使用
- 空気浄化と美観の両立
- 自然の恵みを日常に取り入れる
日本人のDNAに刻まれた智恵

経験に基づく選択
私たち日本人が昔から針葉樹を大切にしてきたのは、決して偶然ではありません。
長い経験の中で:
- どの木が食品保存に適しているか
- どの木が住まいに良いか
- どの木が健康に良いか
ということを、体感的に理解していたんです。
これからの住まいづくり
こうした自然の力を理解した上での住まいづくりは、単なる「自然素材使用」とは違います。
自然の力を活かした住まい:
- 機能性と美しさの両立
- 健康への配慮
- 持続可能性
- 心の豊かさ
すべてを包含した、本当の意味での「自然と共生する住まい」を目指していきたいと思います。
まとめ
成分一つとっても、そこには長い歴史と深い智恵、そして現代科学による裏付けがあります。
そして、フィトンチッドが実際に目で見えるという事実は、自然の力が決して抽象的なものではなく、確かに存在する現実だということを教えてくれます。
**フィトンチッドは目に見えない“森からの贈り物”**です。
それを感じ取る暮らしは、現代のストレス社会に対する自然な処方箋とも言えるでしょう。
森の香りとともに生きる工夫が、心身と環境を整える鍵になります。
自然は、ただ美しいだけじゃなくて、体にも心にもやさしい力を持っている。改めてそのことを実感し、毎日の暮らしに活かしていきたいですね🌿✨