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ドイツの「黒い森」に学ぶ~自然と人が共に歩む森林保護の智恵~

【樅の木のはなし】
今回は少し視野を広げて、ドイツの有名な森「シュバルツバルト(黒い森)」のお話をしたいと思います。この森から学べる森林保護の考え方は、私たち日本人にとっても、とても参考になるものだと感じています。
「黒い森」って何?
光を遮るほど深い森
シュバルツバルト(Schwarzwald)は、直訳すると「黒い森」。この名前の由来は、木々が生い茂って森の中に差し込む光を遮るほど深い森だからなんです。
想像してみてください。昼間でも薄暗く、神秘的な雰囲気に包まれた深い森を。まるでおとぎ話の世界のような、そんな森がドイツには実際に存在しているんです。
多様性豊かな混生林

この森の特徴は、一種類の木だけでなく、様々な樹種が混ざり合って育つ「混生林」だということです。
主な樹種:
- もみの木
- 黒松(クロマツ)
- スプルース(ドイツトウヒ)
- ブナ
それぞれの木が異なる高さに成長し、異なる役割を果たしながら、一つの豊かな生態系を作り上げています。
もみの木と森林保護の絶妙なバランス
成長の特性を理解した管理
もみの木には面白い特性があります。成長すると他の木々の高さを超えて、どんどん上へ伸びていくんです。一見すると「立派に育って良いじゃない」と思いますが、実はここに落とし穴があります。
高く伸びすぎると:
- 強風などの災害に弱くなる
- 倒れやすくなる
- 倒れた際に周囲の森を傷つけてしまう
まさに「木を見て森を見ず」ではダメで、森全体のことを考えた管理が必要なんですね。
森の保護官という存在
そこで活躍するのが「森の保護官(森林レンジャー)」という専門家たちです。
彼らは定期的に森を見回り、成長しすぎて危険になったもみの木を選んで伐採する「間伐」という作業を行います。これは森を壊すためではなく、森林全体を守るための大切な管理作業なんです。
家づくりでも同じことが言えますが、一部分だけを見るのではなく、全体のバランスを考えることが本当に大切だと感じます。
🌳 実践面・特徴的な取組
- 森林所有形態が多様で、州有林・市町村林・私有林が混在しています。
- 管理計画には「伐採」「間伐」「更新」「自然保護」「観光・レクリエーション」という複数の目的が盛り込まれており、木材生産だけでなく、多機能的な森林利用が目指されています。
- 動物(狩猟を含む)と森林利用の関係についての管理も実践されており、例として「ローディア鹿(Red deer)管理コンセプト」が南シュヴァルツバルト地域で 2008 年から実施されています。これは林業・狩猟・レクリエーション・生息地保全を統合したものです。
自然との共生モデル
観光地以上の価値
シュバルツバルトは確かに美しい観光地として世界中から人々が訪れます。しかし、その本当の価値は観光資源としてよりも、「自然との共生を実現している森のモデル」としての存在にあるのではないでしょうか。
人の手と自然の力の絶妙なバランス
この森では:
- 人間が適切に手を入れる
- しかし自然の力を最大限に活かす
- 短期的な利益ではなく長期的な持続性を重視する
こうした考え方は、私たちの家づくりにも通じるものがあります。自然素材を使いながらも、住む人の快適性と建物の持続性を両立させる。それと同じような哲学を感じます。
日本への示唆

学べることがたくさん
シュバルツバルトの森林管理から、私たちが学べることはたくさんあります
自然を理解すること 木の特性や成長パターンを深く理解した上で管理する
全体を見る視点 一本の木ではなく、森全体の健康を考える
長期的な視野 目先の利益ではなく、何世代にもわたる持続性を重視する
専門性の尊重 森林保護官のような専門家の知識と経験を大切にする
私たちにできること
シュバルツバルトの話は遠い国のことかもしれませんが、その考え方は私たちの身近なところでも活かせると思います。
家づくりでも、地域の自然環境に配慮し、持続可能な素材を選び、長く愛される住まいを作る。そんな取り組みが、きっと豊かな未来につながっていくはずです。
森から学ぶことは本当にたくさんありますね。自然の智恵を大切にしながら、人と自然が共に歩んでいける未来を作っていきたいと思います🌿✨